Heart #1
Heart #1
through print and silkscreen on paper, wooden frame
h: 56.5, w: 76 cm (sheet) / h: 62,w: 81.5, d: 3.5 cm (frame)
ed.5
2019
※ 納品まで約4週間程お時間を頂戴いたします。
オリジナル/複製という物事の捉え方、二元論的解釈の保留・再考を通して、本質を探り出すべく、"薄さ"や"反復"といった手法を用いて、精巧でありながら感覚的に違和感が残るような立体や平面作品を、優れた造形技術を駆使して制作する大西伸明。
本作品は2019年にギャラリーノマルでの個展「投影と影取」で発表された新シリーズからの1点。「スループリンティング(※)」という自ら編み出した技法を駆使してノマルの工房刷り師との協働で制作された、他に類を見ないユニークな作品です。
※ スループリンティング(Through Printing)
大西が新たに考案した、スクリーン印刷を応用した技法。
スキージによってインクをこし出す通常のスクリーン印刷とは異なり、インクを吹きつけることでイメージを定着させる。版と支持体の距離によって焦点をコントロールしながら、「集中と拡散」という相反する状態を一度につくり出すことが出来る。
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[展覧会ステートメントより]
投影/影取
モルタル仕上げの床や壁などを見ていると目に入ってくるヒビが気になっている。ジグザグであったり、いくらか分かれ道があったりしている。それらに少し隙間があると尚更気になってしまう。その隙間はネガ(虚)の空間を露出しているのだが、ヒビを起こしている床はそもそもネガポジという構造を持っている。それは例えば器の内側や部屋の内部空間等とは決定的に違っている。
ネガポジということを考えてみると、僕が慣れ親しんだ銅版画(凹版)はほぼネガポジの関係になっている。通常は絵の部分が凹んでいるけれど、仮に銅の板はピカピカの平たいものを用意して、紙をツルツルにしインクをのせて刷り取ると、そこには左右対称のデカルコマニーが現れる。そう考えるとインクは紙と板に挟み込まれたサンドイッチの具材のようなものであり、物体としての虚でもある。銅版画がさらにネガポジの関係に近づくにはインクの存在は実は異物でもある。
心臓の形は左右非対称である。また身体の中の位置も中心から少し外れた場所に存在し、体中の血液を受け止め去なす器のような構造を持っている。しかし何故か心臓が絵画の中で視覚化される際に、いつのまにやら左右対称の良く知られた記号の形になったようだ。
我々の身体の中にはたくさんの二つの関係が存在するが、目や耳などを比べてみると左右非対称である。小さいころ顔の半分だけ鏡に写したりして遊んだ記憶からもかなり左右で違う。もちろん右手と左手の関係は完全な左右対称ではなくシワなど微妙に異なっている。そっと手と手を合わせてその隙間に出来た空間を眺めてみる。様々な違いもあるけれど、その祈る隙間からヒビ割れ、心臓、血管、大地の裂け目など、いま僕の頭の中ではそれらが地続きになっている。
大西伸明 Nobuaki Onishi